A Film About Coffeeをみた
この記事はコーヒーアドベントカレンダーの24日目の記事です。
24日が空いちゃったので、書きます。
初めたときには全然埋まってなくて「あぁこれ僕一人で20日くらい書くやつやな...」とか思ってたカレンダーもたくさんのマニアックな方々に書いていただけました。
このカレンダーを楽しみに生きてきた12月ももう終わってしまいます...。来年は何を糧にこの極寒を生き抜けばよいのか。さみしい。
目次
A Film About Coffee
先日、日本でも公開されたA Film About Coffeeを見てきました。
「究極のコーヒー」とは何か? コーヒーに人生をかけるプロフェッショナル達の熱い仕事ぶりと哲学を追う 世界を席巻するコーヒーカルチャーの"今"を描いたドキュメンタリー
A Film About Coffeeは、サンフランシスコを拠点に活動するCM監督のブランドン・ローパーさんを中心に制作され、もともとアメリカ・イギリスなどで公開されていました。今回この映画を日本に持ち込んでくださったのは、メジロフィルムズという配給会社さんのようです。
もともと日本でもいくつかのコーヒーショップでVimeoでの動画は発売されていたので、僕は先にそちらを見ていました。ですが映画館で改めて見直すと、いろいろ思うところがありすぎて号泣しました。
ということでチラ裏的な内容ですが、映画の内容ではなく、映画を見て感じたことを忘れないように書いておきたいなと思ってこの記事を書くことにしました。
生産者と消費者の関係性
農家の人々の現状
この映画での印象的なシーンはやはり、農場の人たちと、ロースター・バリスタが関わる場面。
Ritual Coffee Roastersのバリスタは、豆を生産しているHondurasの農家の人たちに、彼らが作るコーヒーを知ってもらおうと、エスプレッソとマキアートを淹れます。
コーヒーを作っている本人たちが自分たちの豆はおろかコーヒー自体飲んだことがないという状況は全く珍しいことではなく、僕がホームステイしていたウガンダのコーヒー農家のみんなも、やはりそうでした。
ダイレクトな取引
農家の人たちが自分たちの作っているものがどんな経路を経て僕たちみたいな消費者に届き、彼らの価値となっているかを知ってもらうメリットはたくさんあります。
生産者が、質を重視して農作物を育てる。その質が、ダイレクトに価値となって返ってくるような流通を作る。
そうすることで、消費者はより質の高い美味しいコーヒーを飲むことができ、生産者を含めたコーヒーをつくる人々にその価値を還元することができるようになります。
透明な流通経路
ここに関しては賛否両方あると思いますが、僕は基本的にはここでの「生産者を含めたコーヒーをつくる人々」はできるだけシンプルに少なく、透明な流通経路になる方がいいと考えています。
農家の方々がその生産の価値に対する対等な対価を享受できていない理由の一つに、仲介のマージンがあると思っています。
コーヒー(アラビカ)は標高の高いところで生産されるために、大抵の生産者が大きい街からは離れて暮らしていて、コーヒーの精製の最終段階を行える施設があるような大きい街への豆の輸送は、仲介に頼らざるを得ないという現状もこの状況を助長しています。
この経路を極力シンプルに、極端な例だと「生産者 => ロースター => 消費者」のような流れをつくることで生産者と消費者のよりよい関係性を作り出すことができるのではないかという思いが、この映画で一層強くなりました。
サードウェーブコーヒーと缶コーヒー
「サードウェーブコーヒー」の抱える2つのジレンマ
昨今のコーヒーシーンは、"サードウェーブコーヒー"なんて呼ばれています。A Film About Coffeeのテーマもこれにモロに絡んでいて、このムーブメントを代表するロースターさんがたくさん取り上げられます。
サードウェーブコーヒーの定義はたくさんあると思いますが、僕は「生産段階を含めた、"農作物としてのコーヒー"の価値を見直す」動きだと解釈しています。
前述した事柄を考慮すると、確かに僕もこの流れ自体にはとても賛成です。ですが、サードウェーブの向かう先に個人的には2つのジレンマを感じています。
質の高くないコーヒーの排除
一つ目のジレンマは、「じゃあ質の低いコーヒーはどうなるの?」ということ。
サードウェーブコーヒーでは、「質に見合った価値を農家に還元する」という場所を目指していると僕は考えています。ですが、ロブスタを伝統的に育てていたり、価値のあるコーヒーを作るための教育を受けることができないなどでといった事情を持つ人々はどうなるのか。。。
人々が高品質なスペシャリティコーヒーに関心を向け、コーヒーの本当の美味しさに気付くことはめちゃくちゃ素敵なことだと思います。ロブスタ種や、缶コーヒー自体が全般的に質が低いとは決して言いませんが、一般的にはそう理解されています。そんなロブスタも混ぜられた缶コーヒーが日本で売れなくなることで生計が立てられなくなってしまう人たちがたくさんいることを、忘れてはいけないと思います。
仲介者の存在
二つ目のジレンマは、「それまで仲介者として生計を立てていた人たちはどうなるの?」ということ。
サードウェーブコーヒーを語る上で大切だと個人的に思っている要素として、トレーサビリティー)があります。
トレーサビリティ(英: traceability)は、物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態をいう。日本語では追跡可能性(ついせきかのうせい)とも言われる。
via: トレーサビリティ (流通) - Wikipedia
このトレーサビリティーを向上する一番シンプルな方法が、農家とのダイレクトな取引です。
実際に最近では、北欧やアメリカ西海岸などを中心に農家と直接契約を行っているロースターも増えてきました。
ですがこれは農家の方々により妥当な価値を還元できるようになる一方で、仲介として働いている人たちの職を奪うことになります。
これらのような、サードウェーブコーヒーの裏にあるジレンマをどう解決できるのか、僕にはまだいい方法が思いついておらず、サードウェーブコーヒーには賛成しつつバンザイ!とは言い切れずにいます。
自分にできること・やりたいこと
映画を観終わって、自分にだってできることもたくさんあるのではないか、と焦りを感じたので、今やっていること、これからやりたいことをメモして忘れないようにしておきたいなと思います。
コーヒーノート
今は、昨年くらいからやっているCoffeeNoteのプロジェクトを再開して進めています。
CoffeeNoteは、もともとは僕個人の欲しいを叶えるアプリから始まり、消費者の部分から何か変えていきたいという思いで開発を進めています。今はAPIを作成中で、今年度中に今動いてるアプリをAPI経由で動かせるように移行したいと思っています。
CoffeeNoteで、コーヒーの楽しみ方を知ってくれる人たちが増えてくれれば本当に嬉しい。コーヒーに関心を示してくれる人たちが増えれば、社会も変わると思う。
COFFEE HOUSE TOKYO
「焙煎機やエスプレッソマシンのシェアリングができる場所」 + 「コーヒー関連で何かしてる人たち、コーヒーが好きな人たちが集まれる場所」 を作りたいなと構想を進めています。
その場所から、コーヒーをトピックにして身近で小さいミクロな部分から、世界のコーヒー流通といったマクロなところまで変えていけるようなプロジェクトがたくさんでてくれば、という思いを込めながら進めていこうと思っています。(今の仕事の関係でどのくらい動けるか分かりませんが...)
生産者という面でも
自分が日本に住んでいるというのもあり、消費者側のプロダクトを作ってしまいがちなので、生産者も巻き込めるようなプロダクトまたはサービスを作りたいなとずっと思っています。
ちゃんとアイディアが固まったら、動き出したい。
おわりに
ということで、いろいろと溢れる思いを書いてきましたが、音楽と美しい映像と相まって、1から10000くらいまでのコーヒーの魅力が詰まっていて、この映画を見た後には「うまいコーヒーが飲みたい...」とひたすら思わせてくれるような素敵な映画です。
これからも新宿だけでなく大阪、名古屋、横浜などで上映されるようなので、コーヒー好きな方に限らず、ご興味ある方ぜひぜひ見てください!
日本版Trailer!