2018年のこと。
ぼくは年末年始の大半を、文章を書いて過ごしている。
言葉というものが好きだし、それをつかって文章を編むのも、やっぱり大好きだ。
そして、「振り返る」という行為も好き。
毎年のこの時間が、とてつもなく、たのしい。
それは自分自身を発見し、更新するという行為だから。
今年も相変わらず、ぼくは人間が勝手に線を引いた「一年」という単位にならって、僕自身を発見する旅に出ることを避けられないようだ。
もくじ
- もくじ
- これまでのこと。
- 序章:大切にしたいものが、大きく更新されてしまった。
- 出会った本
- 出会った作品
- 出会った場所
- 出会ったおと
- かんがえたこと
- つくったもの(PRIVATE WORKS)
- 沿革
- さいごに
これまでのこと。
序章:大切にしたいものが、大きく更新されてしまった。
2018年、一番大きくて大切な変化。
ぼくは、コーヒーが好きだ。
そして「コーヒーの関わる事業を通して生産国の現状を変える」ということだけを言いながら、ここ数年生きていた。本当に、そのことばかりだった。
そして、今年は、大きくそのことが変わってしまった。
振り返ってみるとこれまで、大体4年くらいの周期で、ある特定の領域に激しく執着し、そしてあっさりと捨ててしまう、ということを繰り返してきた。
中学から高校にかけては、音楽しかやってこなかった。
大学に入ってからバンドも新しく結成し活動していたのだが、ある時期から音楽への絶望感を感じるようになっていた。
そして、バンドを抜けてからは音楽に関することを一切辞め、逃げ場を探すようにコンピュータに傾倒した。ぼくにとってコンピュータとインターネットの世界は、とても輝いていて、面白がれた。ずっとずっとコードを書き続けて生きていたいと思った。楽しかったし、日々、技術を学ぶことに必死だった。
そしてCTOとして会社を始めてからしばらくして、アフリカでのコーヒーとの出会いのことが忘れられず、いつの間にかコーヒーにのめり込んでいた。
そして、Colored Life Coffeeというコーヒースタンドを始めた。
その中で、ぼくらが経験し、考えたことのなかから、「MATERIA」というコーヒーのプロジェクトが始まった。
そしてちょうど、コーヒーに執着し始めてから4年ほど経つことになるみたいだった。
かつて抱いていた、コーヒーへの執着が、消失してしまったような感覚がある。
それはぼくにとって、とてもとても怖いことで、僕は僕自身に盲目になる暗示をかけて、そんなこと気付かないように振る舞ってきた。
それは、これまでの短くない時間、血肉を捧げてきたものだったから。
それをあっけなく捨て去ろうとしている。その恐怖と、ここ半年くらいは戦っていたのかもしれない。
***
ぼくにとっての軸は今、みっつある。
ひとつは「アート」。
「アート」こそが、人間にとって、そして自分自身にとって最も切実で、重要なものである、と考えるようになった。
そして「デザイン」。
これは、アートと根本的には真逆を向いたベクトルであることが多いのに関わらず、表面的に見ればその手の動きが似ている。だからたのしい。
さいごに「経営」。
生きている限り、みな、少なからず自分の人生を経営している。この資本主義の仕組みの上で生きる限り、経営とは「経済活動」そのもののことであるくらいの意味を持っているように思う。
これらのみっつのことは、何かを言っているようで、何も言っていないくらいに、空気のような、抽象のような、原理のようなものたちであると思います。
これらのことなら、一生をかけて、自分の活動を貫き続ける何かになり得るのではないか、と思っているわけです。
出会った本
2018年も、素敵な本との出会いがたくさんありました。これまでとは、読む毛色がかなり変わったような気がします。そして、2018年は特に「読まない」ことを大切にできたと思います。その分フィルターを強めることができ、共鳴度合いの高い本とたくさん出会えたように感じます。
『読む』より、『読まない』をぎゅっと大切にしたい。 - 生活の詩のようであり、社会への書簡のようなもの。
今年読んだ本は53冊。その中でも特に、印象に残っている本たち。
- 旅のラゴス (新潮文庫) 著者 : 筒井康隆
- 水たまりの中を泳ぐ―ポスタルコの問いかけから始まるものづくり 著者 : マイク・エーブルソン エーブルソン友理
- 新版 クラウド・コレクター (ちくま文庫) 著者 : クラフト・エヴィング商會
- ミナ ペルホネン?[通常版] 著者 : ミナ・ペルホネン
- あおくんときいろちゃん (至光社国際版絵本) 著者 : レオ・レオーニ
- 猪熊弦一郎のおもちゃ箱: やさしい線 著者 : 猪熊弦一郎現代美術館= 小宮山さくら
- デザインの輪郭 著者 : 深澤直人
- ブルーノ・ムナーリ 著者 : ブルーノ・ムナーリ
- Anu Tuominen: thinkables
- Ex-formation 著者 : 原研哉
- トラフ建築設計事務所 インサイド・アウト 著者 : トラフ建築設計事務所
出会った作品
特に影響を受けた作品。
- ブルーノ・ムナーリ「役に立たない機会」
- ピエト・モンドリアン「Composition」
- ジョゼフ・コーネル「ピアノ」
- Anu Tuominen
- ミルチャ・カントル「存在に対する形容詞」
- イブ・クライン
出会った場所
- 青と赤展
- 「ブルーノ・ムナーリ こどもの心をもちつづけるということ」展
- さわひらき 潜像の語り手 | KAAT Exhibition2018ー潜像ー
- DIC川村記念美術館
- 田根剛展
- 「あなたの存在に対する形容詞」ミルチャ・カントル展 | HERMESギャラリー
- デザインあ展
- ゴードン・マッタ=クラーク展
- 音のアーキテクチャ展
出会ったおと
- Haruka Nakamura
- Abe Umitaro
- Miyake Jun
- BUMP OF CHICKEN
- Takagi Masataka
- Cornelius
- 崎山蒼士
かんがえたこと
- 「主観」と「相対感」
- 目的のための過程ではなく、過程のための目的
- すべての具象は、美しい抽象のために
- 人生は積み木のようなものではなく、彫刻のようなもの
- 社会学的万有引力について
- 「膨らませることば」「削り出すことば」
- 「目的」「機能」の脆さと、「無目的的さ」から生まれる人間にとっての切実さ。
- 偶発的必然性
- 意識的無意識の獲得
つくったもの(PRIVATE WORKS)
- 「それよりも、それを視る箱」
- 「Letters from Other Days」
- 「まるさんかくしかく」
全てWIP。 ”おわりかた"を探すのを、うまくならねばなぁ。
沿革
【一月】
- 経営合宿で、チームとしてColored Life Coffeeを辞める決断。
【二月】
- ウガンダからパートナーのウガンダ人がCLCに来店
- 超計画&&超実行時期
- ブルーノ・ムナーリさんとの出会い
- イブ・クラインとの出会い
- Colored Life Coffee閉店イベント「Thanks Letter for New Journey」
【三月】
- 新しい始まり、しごとの仕方、自分の幸せな働き方について
- 個人的な創作活動を開始(?) 「世界は『主観』と『相対感』」
- BALMUDA寺尾さんと話す。衝撃を受けた。
- クロコムが開始。 MATERIAの料金表をつくりはじめた
【四月】
- 経済活動への奔走と、反発して醸される思想
- 資金調達。個人の投資家の方に会い続ける日々
- このころから、自分の「ことば」が醸成されはじめる
【五月】
【六月】
- 「ミナ ペルホネン」の作品集との出会い
- 引き続き資金調達に奔走。方針が見え始める
【七月】
【八月】
【九月】
- 個人の創作「まるさんかくしかく」が始まる
- 「CIAL」ということばとその概念について
- 「#今日の椅子」シリーズが始まった
- 「トラフ設計事務所」の作品集との出会い
- 岡山に帰省。大学を退学。
- 株式会社CIALを設立
【十月】
- 木工を始める
- Whosecacaoさんとのプロジェクト「CROKKA」が始まる
- 「それよりも、それを視る箱」のコンセプトの種が生まれる。リサーチ。
- STORE HOUSE出店。振り返って視ると、想像していたよりも、意味のある遠征となった。
- 直島に2人の友人と。チームとしても大きな転機になった。
- 100BANCH卒業。
【十一月】
- 「美しさ」への感覚が研ぎ澄まされているような感覚
- 「#構造スケッチ」
- 「職人的非職人」であるということへの自覚が芽生え始めた
- GaudiyさんのWebデザインのおしごと
- Whosecacaoさんとの仕事、CROKKA第一弾「CROKKA brittle」の発表。CIALにとっても根元の根元からやった仕事第一弾だった。
【十二月】
- CARAVANのデザインのしごとが始まる
- 体調を壊す。それを機に、精神的にも圧迫され、仕事や人生について考える
- JM経営塾の合宿。ドワンゴ川上さんとの対峙。生と死、始まりと終わりについて。だったら僕は何をするのか?
- CIALの、会社としての在り方について考え直す
- 「C-I-A-L」プロジェクト発足
- MATERIAプロジェクトが加速し始める
- CIAL meetup #1(忘年会)。CLCからCIALへと続く文脈の端緒を見たような感覚がした。
さいごに
この一年で、ぼくは一年前のぼくを思い出せないくらいに、大きく価値観が更新されてしまった。
この一年で出会った人たちとの関わりがなければ、今頃自分は、全く違う自分であっただろう、と。
強くフィルターをかけていたこんな自分と、関わってくれたひとは、その分ぼくにとって本当に切実で、有難いと思うばかり。なんとか、僕から、何かを還したいな。
来年の今日には、この「振り返る」という行為を、ことばだけでなく、創作物を通してやれるようになりたい。
作品とは、プロセスにおけるスナップショットのようなものだから。そのときの感情をぎゅっと絞り出して氷で閉じ込めたようなものに、感じるから。