コーヒーにおける「濃度」と「収率」が与える影響。美味しいコーヒーをつくるために
はじめに
この記事はコーヒー Advent Calendar 2016の1日目の記事です。
一年間、短かったようで、長かったですね。。
僕はこの一年間、このAdvent Calendarを楽しむためにこの季節まで頑張ってきたと言っても過言ではありません。
そしていろいろ迷ったのですが、1記事目は「どうやったらコーヒーを美味しくつくれるか?」というとても単純でかつ追い求め続けるべき至上のロマンとも言える疑問に真っ向からぶつかっていきたいと思い、この内容にしてみました。
濃度と収率。
コーヒーを美味しく抽出するためにはとても大事な概念です。
コーヒーをやっている方は一度はきいたことがあるのではないでしょうか…?
一度、このコーヒーの「濃度」と「収率」について自分なりに調べてまとめておきたいなと思ったので、この機会に調べてまとめてみました。
独学で調べたりしてるので、間違いなどあったら教えてやって下さい…!!
「濃度」と「収率」とは…?
「濃度」とは
英語だと濃度はbrix,収率はyieldといいますね。共通語としてこれらの英単語を用いることが多い気がするので覚えておくといざというときに議論に役立つと思います。
ではこの「濃度」とは、どういうものでしょうか。
濃度(brix)とは、
Brix(ブリックス)値は、主に食品産業のワイン、精糖、果実農業などで、ショ糖(いわゆる砂糖)、果糖、転化糖、ブドウ糖など、いわゆる糖の含有量を測るために、糖度として用いられる物理量である https://ja.wikipedia.org/wiki/Brix
そして似た概念として、TDSというものもあります。TDSとは、
Total Dissolved Solid の略で、水中に溶解されている物質の濃度を表します。 物質には炭酸塩、重炭酸塩、塩化物、硫酸塩、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、有機イオン、その他のイオンなどが有ります。 http://over-limit.hp.gogo.jp/pc/free10.html
ふむ。
Brix(ブリックス)とは糖度計(屈折計)の測定表示値の目盛名です。 果汁、ジャムのようにほとんど糖分のみが溶け込んでいるサンプルでは、Brix=糖度になります。 スープやたれのように色々な成分が溶け込んでいるサンプルでは、Brix=濃度になります。 通常、糖度と濃度の違いは意識せずに、Brix(ブリックス)がいくつと言っています。単位は%です。果物の糖度の表示には○度という表示も用いられます。 http://www.atago.net/japanese/g_gaiyou.html
(何で糖度と濃度は同じ扱いでいいのだろう…?)
brixとTDSの違い
brixとTDS(Total Dissolved Solid)って何が違うんでしょうか?
こちらの記事によると、
Brixの説明を読むと、「ショ糖液100g中に含まれるショ糖のg数を目盛ったもの」とあります。 基本的には、溶液中にショ糖のみが含まれていれば、その割合を%で表示するということ。 また、「他の物質を主体とした溶液で、特に定量的に濃度を知りたいときには換算表が必要です」ともある。 つまり、溶液中にショ糖以外が含まれているなら、それは、正確な溶液の濃度ではないということ。 塩などの溶液であれば、換算表(多分定数を掛ける)ことによって割り出すことができるということです。 で、TDSですが、「コーヒーの可溶性固形分濃度%(g/100g)を示します」とあります。 http://ameblo.jp/sugichan0826/entry-11920899630.html
とありました。Brixではショ糖のg数を測定しているのに対して、TDSでは可用性固形物の濃度を測った数値のようです。
TDSの方がより精密に「お湯に溶け出しているコーヒーの粉の濃度」を測定することができる、という認識で正しいということになりそうです。
このように、濃度とは、その言葉の通り抽出されたお湯に対して粉がどれくらい溶け込んでいるかを表します。
「収率」とは
では収率とはなんでしょうか。Wikiによると、
ある物質を得るための化学プロセスにおいて、理論上得ることが可能なその物質の最大量(理論収量)に対する実際に得られた物質の量(収量)の比率である。
とある。要するに、抽出に使ったコーヒーの粉全体に対して、実際に溶け込んだ粉の量の比率、ということになる。これはコーヒーの濃度から求めることができるわけですね。
「濃度」と「収率」の関係性
よって収率は以下の式で求めることができます。
抽出されたコーヒーの量 × 濃度 ÷ 使用したコーヒーの粉量
コーヒーの粉量に加えて、抽出をおえたあとの全体の液量と、brix(またはTDS)を測れば収率(yield)は求めることができるんですね。
yieldは18-22%くらいが適切とあって、私のお店では19%を美味しい基準として豆ごとに調整しています。
コーヒー豆だとどんなに頑張っても35%以上にはならないみたいです。
濃度と収率が液体に及ぼす影響
濃度が及ぼす影響
濃度はどのように液体に影響するでしょうか。おおざっぱに以下のような認識を持っておけばいいと思います。
- 濃度が上がると、味が濃くなる。
- 濃度が上がると、甘み、口当たりを感じやすくなる。
- 濃度が下がると、フレーバーを感じやすくなる。
収率が及ぼす影響
そして一方、収率が上がると以下のような影響があります。
- 収率が上がると、渋みや辛みを感じやすくなる。
- 収率が下がると、酸味を感じやすくなる。
baristahustle.comでむっちゃ分かりやすい図が掲載されていたので転用させていただきます。こんな感じ。
via: https://baristahustle.com/espresso-recipes-understanding-yield/
レシピの各要素が濃度と収率をどう決定するのか
では最後に、レシピのどの要素をいじったら「濃度」と「収率」にどのような影響を与えるのかを、まとめてみようと思います。
- コーヒー粉量 … 増やせば濃度が上がる。増やすと収率が下がる。濃度の上昇を上回る収率を上昇させることは見込めなくなるので。
- コーヒー粉の粒度 … 細かくすると濃度が上がる。収率も同時に上がる。(同じ粉量で抽出効率が上がるので)
- 湯温 … 上げると濃度が上がる。収率も同時に上がる。
- 抽出時間 … 長くすると濃度が上がる。収率も同時に上がる。
- 抽出液量 … 少なくすると濃度が上がる。収率は下がる。
まとめ
ということで、以上のことを踏まえて、各パラメータをいじっていくことで「濃度」と「収率」を意識した、より自分の求める美味しいコーヒーにかつ、ブレのない味を出していくことができそうです。
ただ、コーヒーの濃度と収率は「この数値なら絶対に美味しいはずなんだ!!」というものではないと思います。ですが、ひとつの指標としてとても有力な数値になることは間違いないです。
なので、それらの数値を最重要視するのでなく、あくまで数値を利用してどうやったら美味しいコーヒーが抽出できるのか?を豆ごとに考えていきたいなと思います。
余談
Yieldをより深く理解するためには、前提知識としてextractionについて深く知っておくのがいいなとこの記事を読んで思いました。
Strengthに関してはこちら。
そしてAtagoとVSTでは、VSTの方がやっぱり精度高いみたいですね。高い分、高い。。
再び、Barista HustleからMatt Pergerさんの投稿。
https://www.facebook.com/groups/baristahustle/permalink/1656148871301331/
参考にさせていただいた記事
以下の記事を参考にさせていただきました。
Extract More Better – Barista Hustle
濃度と収率の美味しい関係 / Viva! Longblack!
CROSSING Coffee Roastery Blog — Concentration & Yield
Espresso Recipes: Understanding Yield – Barista Hustle
株式会社アタゴ-誰でも解る!糖度計ガイド はじめに(概要)《屈折計、屈折率計、糖度計、濃度計、旋光計の専門メーカー》